ジョン・ワナメーカー(John Wanamaker)は、アメリカの著名な実業家、慈善家、政治家であり、「近代的なデパートメントストアの父」として知られています。彼の業績は小売業だけでなく、広告、顧客サービス、慈善活動にも及びます。
基本情報
・生誕: 1838年7月11日、ペンシルバニア州フィラデルフィア
・死没: 1922年12月12日、ペンシルバニア州フィラデルフィア
・職業: 実業家、政治家、慈善家
・分野: 小売業、広告業、郵政
経歴
初期の人生
・フィラデルフィアで比較的質素な中流家庭に生まれました。
・14歳で最初の仕事としてタワー&ホール書店で働き始め、商業の基礎を学びました。
・その後、ベネット&コーの紳士服店で働き、小売業の経験を積みました。
ビジネスの成功
・1861年: ネイサン・ブラウンと共同で「オークホール衣料品店」を設立。
・1876年: 世界初の近代的なデパートとされる「ワナメーカー・デパートメントストア」をフィラデルフィアに開業。
・当時としては革新的な6階建ての大規模店舗
・スローガンは「すべての人のための店 (A store for all the people)」
・1896年: ニューヨーク市にも進出し、A.T.スチュワート店を買収
デパート経営の革新
ワナメーカーは小売業界で多くの革新的なアイデアを導入しました。
1.定価販売制の導入:
・当時主流だった交渉制を廃止し、全商品を固定価格で販売
・「One price and goods returnable」(一つの価格と返品可能な商品)という方針を確立
・この「定価販売」モデルは、消費者に公正で透明な買い物体験を提供
2.広告の活用:
・新聞広告を積極的に活用し、商品の魅力を大々的に宣伝
・広告内容の正直さと正確さを重視
・「広告の父」と呼ばれるようになった最初の実業家の一人
3.顧客サービスの向上:
・アメリカで最初の商品返品保証制度を導入
・商品説明の明確化と価格表示の徹底
・顧客満足を最優先する方針を確立
4.店舗のエンターテイメント化:
・美しい装飾、音楽コンサート、アートギャラリーなどを通じてショッピング体験を向上
・1911年に設置された世界最大のパイプオルガン(当時)は、文化的シンボルとなった
・季節ごとの展示や教育的なイベントを開催
政治と公共サービス
・1889年 – 1893年: 第23代大統領ベンジャミン・ハリソン政権下で郵政長官を務める
・農村部への無料配達サービスの拡大
・郵便貯金制度の提案(後に1910年に実現)
・国際郵便サービスの改善
慈善活動
・敬虔なプレスビテリアンとして知られ、キリスト教的価値観を事業に反映
・ベタニー教会の設立と日曜学校の運営
・YMCA活動への積極的な支援
・フィラデルフィアの教育施設への寄付
革新的な経営哲学
・「お金を失うのは一時的だが、信用を失うのは永久だ」
(Money may be lost in many ways, but a good name once lost is gone forever)
・「広告費の半分は無駄になるが、どの半分かはわからない」
(Half the money I spend on advertising is wasted; the trouble is I don’t know which half)
・「正直な商売こそが最良の方針である」
(Honest merchandise, honest prices, honest service)
死去と遺産
・1922年12月12日、84歳で死去
・フィラデルフィア店は1995年まで、ニューヨーク店は1954年まで営業を継続
・現代の小売業における以下の要素の先駆者として認識されています:
・固定価格制
・返品保証
・店内エンターテイメント
・科学的な広告手法
・顧客サービス重視の経営
現代への影響
・現代の百貨店経営の基本原則の多くは、ワナメーカーが確立
・顧客第一主義のビジネスモデルの創始者
・広告業界における倫理的規範の確立者
・小売業における従業員教育の重要性を示した先駆者